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はじめての海外はひとり旅

「はじめての海外旅行」は突然だった。人間関係に疲れたことが原因で、勤めていた会社を退職。実家住まいをいいことに、当時は毎日ゴロゴロしていた。このままではいけない…と思うのだが、再就職する気分にはなれない。そうだ、旅に出よう。旅に出れば、また「やる気」が沸いてくるかも知れない。なぜだかそう思い、僕はひとり旅に出ることにした。
旅の行き先は、なんとなくタイに決めた。僕と同じような「自分探し系」の若者が多く訪れる国であることは知っていたし、海外旅行初心者にも優しいおおらかなイメージがあったからだ。
思い立ったが吉日。僕は書店に駆け込みタイの旅行ガイドと、旅行英会話の本を買った。旅行ガイドは定番の「地球の歩き方」をはじめ、色々な種類が出回っていたが、僕は一番地味なものを手に取った。現地で「いかにも旅行ガイド」といった派手な体裁の本を広げるのは、ちょっとカッコ悪いと思ったからだ。旅行英会話の本は、「旅先で役立つカンタン英会話」といった感じのタイトル。「空港はどこですか?」、「日本語を話せますか?」といった英会話ともいえないフレーズ集だったが、英語がまったく話せない僕にとっては命綱だ。
家に帰りガイドブックを眺めていると、海外旅行にはパスポートが必要なことに気づいた。早速、旅券事務所に出向き申請をしたが、発行までに1週間程度はかかるという。その間、僕は航空券の予約をしておくことにした。といっても、これまでに飛行機に乗ったことはなく、どこで航空券を売っているのかさえ分からなかったので、とりあえず旅行会社に出向いた。旅行会社のお姉さんによると、成田からタイのドンムアン空港まで、一番安いチケットで往復4万円程度。
ただし出発日や帰国日をあらかじめ決めておかなければならない上、途中変更もできないらしい。僕はこの旅のコンセプトを「貧乏旅行」と決めていたので、迷わずに一番安いチケットを買った。帰国日は、出発から一週間後に設定。旅行会社のお姉さんは、ホテルの予約をしておくこともすすめてくれた。だけど、「泊まるところも決まっていないフラリ旅」に憧れていた僕は、お姉さんの提案を断った。
帰宅後、旅行ガイドをパラパラと眺めていたが、事前に情報を仕入れておくと、現地に着いたときの感動が薄れるような気がした。以後、出発まで旅行ガイドを封印して、僕は実家でゴミ扱いをされながらゴロゴロと暮らした。

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