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イチかバチかのホテル探し
バンコク中心部にあるホアランポーン駅は、素朴だった空港の駅とは違い、人でごった返していた。駅舎から外に出ると、殺人的に荒い運転で走り回る車やバイクに轢かれそうになる。とりあえず安宿が集中しているというカオサン・ロードに向かった。さすがにバックパッカーの聖地といわれているだけあって、僕と同じようにリュックを背負った連中が通りをさまよっている。けれど「いかにも」すぎるムードに、僕は違和感を覚えた。海外にいるというよりは、何か下北沢にいるような中途半端な空気が流れているのだ。やたらと日本人がウロウロしているのが原因なのか…?僕はもっと異国感を味わいたかったので、カオサン・ロードから早々に立ち去った。
しばらく歩いていると、チャイナタウンという中国系の人々が暮らすエリアに辿り着いた。そろそろ日も傾きかけているし、とりあえず今夜の宿を決めようと周囲を見渡した。幸い、ここにも宿はたくさんあった。ただ僕のようにリュックを背負った人は、全然いなかった。仲間がいなければいないで、不安になってくるものだ。意を決し、ボロボロのビルに足を踏み込んだ。まるで築50年以上の団地といったチープな雰囲気だが、ホテルと看板が出ているので、一応は泊まれるのだろう。あらかじめ丸暗記しておいた言葉を、フロントで叫んだ。「ドゥ、ユー、ハブ、ア、ベイカント、ルーム?」。思いっきり、カタカナの棒読みだ。でも無事に泊まれたので、なんとか通じたのだろう。窓がひとつもない牢獄のような部屋に通されたが、一泊800円だけに仕方あるまい。僕は部屋のチープさを嘆くより、自分の力で宿に泊まれたことに満足していた。気分が良くなったので、部屋に荷物を置いて街を歩いてみた。雑然とした通りを歩いていると、道端の屋台からいい香りがしてくる。お腹をグーグー鳴らしながら見ていると、屋台のおっちゃんが「食べていきなよ」と誘ってきた。もちろんタイ語なので、正確には何を言っているのか分からない。でもシチュエーションと表情である程度察しはつく。僕はこの後も、色々なタイ人とコミュニケーションをとったが、お互い共通の言語を話していないのに、不思議とある程度は意思の疎通がとれた。
屋台では、ショーケースにあった材料を指差すだけで、それが多彩な料理に化ける。三食ごとに色々な屋台を試すのが、楽しみになった。もちろん食費は格安だ。
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